「今日はパットが悪かった」「ドライバーさえ曲がらなければ」——ラウンド後の反省は、たいてい感覚で語られます。そして感覚は、かなりの頻度で間違っています。
Strokes Gained(ストロークスゲインド、以下SG)は、その感覚を数字に置き換える方法です。1打1打が「基準となるプレーヤーと比べて何打ぶん得だったか・損だったか」を計算し、スコアを失っている本当の場所を特定します。米PGAツアーでは2011年に公式スタッツとして採用され、現在ではプロの世界の標準的な分析手法になっています。選手のインタビューやテレビ中継で「SG:パッティングで首位」といった表現が当たり前に飛び交う——それが米国ゴルフの現在地です。
一方の日本では、SGはまだほとんど知られていません。日本語で読める体系的な解説も、事実上存在しない状態が続いてきました。この記事は、その空白を埋める決定版として書いています。SGの定義、生まれた背景、計算の仕組み、具体的な計算例、4つのカテゴリ、SGが覆した通説、そしてアマチュアがどう使うか。この1本で全体像がつかめる構成です。長い記事ですが、読み終えたとき、自分のゴルフを見る目が変わっているはずです。
1. Strokes Gainedの定義——1行で書ける
SGの定義は、突き詰めれば1行で書けます。
そのショットが、期待値と比べて何打ぶんスコアを縮めたか(伸ばしたか)。
ここでいう「期待値」とは、その状況から基準となるプレーヤーがホールアウトまでに要する平均打数のことです。たとえばPGAツアーのプロは、フェアウェイ140ヤード地点から平均およそ2.9打でホールアウトします。グリーン上8フィート(約2.4m)からは平均約1.5打。この「地点ごとの平均残り打数」をベンチマークと呼びます。ゴルフコース上のあらゆる地点に、あらかじめ「ここからは平均◯打」という値札が付いている——そうイメージしてください。
ショットを1回打つと、ボールの位置が変わり、値札も変わります。打つ前の値札と、打った後の値札の差分。そこから実際に消費した1打を引いたものが、そのショットのSGです。
SG =(打つ前の期待打数)−(打った後の期待打数)− 1
期待値を1打ぶんより大きく前進させればプラス(ゲイン=得)、1打ぶんに満たなければマイナス(ロス=損)。原理はこれだけです。ナイスショットは数字がプラスになり、ミスショットはマイナスになる。しかも「どれくらい良かったか/悪かったか」が小数第1位まで出ます。

ゴルフのスコアは18ホールの合計という粗い集計値ですが、SGはそれを1打単位まで分解します。80というスコアの内側で、どの1打が貢献し、どの1打が足を引っ張ったのか。SGはスコアの「解像度」を最大まで上げる技術だと言えます。
2. 生まれた背景——ShotLinkとMark Broadie
SGは思いつきの指標ではありません。誕生には2つの前提条件がありました。膨大なショットデータと、それを解析した研究者です。
前者を用意したのがPGAツアーのShotLinkシステムです。2000年代初頭から本格運用されているこの仕組みは、ツアー競技の全ショットについて、ボールの位置座標をレーザー計測等で記録します。誰が・どこから・どこへ打ったか。年間で数十万ショット、累積では数千万ショット規模のデータベースが、こうして出来上がりました。
後者が、コロンビア大学ビジネススクールのMark Broadie(マーク・ブロディ)教授です。金融工学が本職のBroadieは、このShotLinkデータを解析し、「どの位置・どのライから、平均何打でホールアウトするか」を距離刻みで数表化しました。ティー、フェアウェイ、ラフ、バンカー、リカバリー、グリーン——ライごとに、あらゆる距離の期待打数が求められた。これがベンチマークの正体です。
この研究を土台に、PGAツアーは2011年、まずSG:パッティングを公式スタッツとして採用しました。パットだけが先行したのは、グリーン上が最もデータ構造が単純だったためです。その後、ティーショットからグリーンまでを分解した各部門(SG:オフ・ザ・ティー、SG:アプローチ、SG:アラウンド・ザ・グリーン)へと拡張され、現在の4部門体制が整いました。Broadie自身は2014年、研究の集大成として『Every Shot Counts』を出版。SGを学ぶ上での原典です(2026年時点で日本語訳は出ていません)。
重要なのは、SGが「理屈から演繹された指標」ではなく「数千万ショットの実測から帰納された指標」だという点です。後述する「常識を覆す発見」の説得力は、すべてこのデータ量に由来します。
3. 従来のスタッツはなぜ機能しないのか
フェアウェイキープ率、パーオン率、平均パット数。長年ゴルファーが使ってきたこれらのスタッツには、共通する構造的欠陥があります。すべてのショットを「成功か失敗か」の2択でしか数えられないことです。ゴルフのショットの出来は連続的なのに、物差しが2値しかない。ここから様々な歪みが生まれます。
フェアウェイキープ率の欠陥。 280ヤード飛んでラフの浅い所に止まったドライブと、180ヤードでフェアウェイ中央に残ったドライブ。キープ率の世界では後者だけが「成功」です。しかし残り距離を考えれば、前者のほうが次打を短いクラブで打てるぶん有利な場面は多い。距離という最重要情報を、この指標は完全に捨てています。さらに、フェアウェイを1cm外れたボールと林の奥に消えたボールが同じ「失敗」1カウントである点も致命的です。
平均パット数の欠陥。 これが最も誤解を生んでいる指標です。パット数は、実はパッティングの腕前ではなくアプローチの質に支配されます。グリーンを外し続けて寄せワン狙いのゴルフをすれば、1パット目は常に短くなりパット数は減ります。逆にパーオンを重ねる好調な日ほど、1パット目は長くなりパット数は増えます。「今日は36パットも打った、パット練習しなきゃ」という反省が、実はショット好調の証だった——ということが普通に起こります。パット数が少ないことは、パットが上手いことを意味しません。
パーオン率の欠陥。 ピンまで20mのパーオンと、50cmのパーオンが同じ1カウント。前者は3パットのリスクを抱え、後者はほぼバーディです。これも距離情報の欠落です。
ハンディキャップの限界。 ハンディキャップはプレーヤーの総合力を示す優れた仕組みですが、あくまでスコアの集計値であり、「なぜそのスコアなのか」を一切説明しません。HC15のゴルファーが10を目指すとき、ハンディキャップは道筋を何も教えてくれない。診断機能がないのです。
SGはこれらの欠陥をまとめて解決します。全ショットを「地点と状況(ライの種類+残り距離)」という連続的な物差しで評価するため、280ヤードのラフと180ヤードのフェアウェイの価値の差、20mのパーオンと50cmのパーオンの差が、そのまま数字に表れます。従来スタッツが捨てていた情報を、SGは1つも捨てません。
4. 仕組み——ベンチマークという物差し
SGの計算に使う代表的なベンチマーク値を見てみます(PGAツアー平均・Broadieの公表データに基づく概数です)。
| 状況 | 期待打数 |
|---|---|
| ティー・パー4残り400yd | 3.99 |
| フェアウェイ残り170yd | 約3.0 |
| フェアウェイ残り140yd | 2.91 |
| ラフ残り170yd | 約3.3 |
| グリーンサイドバンカー | 約2.5 |
| グリーン上20ft(約6m) | 1.87 |
| グリーン上8ft(約2.4m) | 1.50 |
| グリーン上3ft(約0.9m) | 1.04 |
この表は、計算に使う前に眺めるだけで価値があります。読み取れることをいくつか挙げます。
- 8フィート(2.4m)の期待値が1.50 ——つまり世界最高峰のプロでも、この距離は半分しか入りません。アマチュアが2.5mを外して落胆する必要はまったくない、ということです。3フィート(90cm)でようやく期待値1.04、「ほぼ確実」の領域に入ります。
- 同距離のフェアウェイとラフの差は約0.2〜0.3打。ラフは痛いが、致命傷ではない。一方、林からのリカバリーや池・OBのペナルティは1打単位で失われます。避けるべき本当の敵はラフではなく「次が普通に打てない場所」です。

- パー4のティーショットの期待値がほぼ4.0ということは、パーとは「期待値どおり」の結果にすぎません。だからプロはバーディを「取りにいく」わけです。
ペナルティの扱いも簡潔です。OBや池でストロークと距離の罰を受けた場合、消費打数にペナルティ分が加算されるだけで、計算式は変わりません。特別ルールは不要です。
そしてもう1つ重要な点。ベンチマークはPGAツアープロだけでなく、アマチュアのスコア帯ごとにも整備されています。Broadieは自作の記録プログラムを通じて一般ゴルファーのショットデータも大量に収集しており、『Every Shot Counts』には平均90前後のゴルファーの期待打数表も掲載されています。当然、アマチュアの期待値はプロより大きくなります(同じ140ヤードでも、乗る確率が違うので)。どの物差しで測るかは目的次第ですが、物差しさえ固定すれば、誰のゴルフでも同じ土俵で診断できる——これがSGの汎用性です。
5. 計算例——2つのホールを計算してみる
理屈は十分です。パー4・400ヤードを、実際に2ホールぶん計算します。
例1:パーで上がったホール
1打目(ティーショット):260ヤード飛んでフェアウェイ。残り140ヤード。
SG = 3.99 − 2.91 − 1 = +0.08
2打目(アプローチ):グリーンオン、ピンまで20フィート。
SG = 2.91 − 1.87 − 1 = +0.04
3打目(ファーストパット):カップを3フィート通り過ぎる。
SG = 1.87 − 1.04 − 1 = −0.17
4打目(セカンドパット):カップイン。
SG = 1.04 − 0 − 1 = +0.04
合計SGは +0.08 +0.04 −0.17 +0.04 = −0.01。期待値3.99のホールを4打で上がったので、きれいに帳尻が合います(ホールの合計SGは必ず「期待値−実打数」に一致します。検算が効く、よくできた仕組みです)。
注目すべきは中身です。スコアカード上は「パーオン2パット、問題なし」。しかしSGで見ると、このホールで最も損をしたのは20フィートを3フィートもオーバーさせたファーストパット(−0.17)だと分かります。パーという結果の内側にも、得したショットと損したショットが混在している。この解像度が、SGの視界です。
例2:ボギーを叩いたホール
1打目:230ヤード、ラフへ。残り170ヤード。
SG = 3.99 − 3.28 − 1 = −0.29
2打目:ラフからグリーンを狙うも、ショートしてガードバンカーへ。
SG = 3.28 − 2.53 − 1 = −0.25
3打目(バンカーショット):8フィートに付ける。
SG = 2.53 − 1.50 − 1 = +0.03
4打目:8フィートを外し、カップ横1フィートへ。
SG = 1.50 − 1.00 − 1 = −0.50
5打目:タップイン。
SG = 1.00 − 0 − 1 = 0.00
合計 −1.01。期待値3.99を5打——ボギーです。
このホールをプレーした本人の記憶に残るのは、おそらく「入れ頃の8フィートを外した」ことです。確かに単発では最大のロス(−0.50)ですが、8フィートはプロでも五分の距離。半分は外れるのが正常です。一方、ティーショットとアプローチで合計−0.54を失っていることには、たぶん本人は気づいていません。「惜しいパット」は記憶に残り、「なんとなくのラフ」「なんとなくのショート」は記憶に残らない。感覚とデータが食い違う典型例であり、SGが必要な理由そのものです。

6. 4つのカテゴリ——ラウンドを1枚の内訳表にする
1打ごとのSGを、ショットの種類別に合計したものが4カテゴリです。
| カテゴリ | 正式名 | 対象 |
|---|---|---|
| SG:OTT | Off the Tee | パー4・パー5のティーショット |
| SG:APP | Approach | グリーンを狙うショット(おおむね残り100yd以遠。パー3のティーショット含む) |
| SG:ARG | Around the Green | グリーン周り(おおむね30yd以内)の寄せ・バンカー |
| SG:PUTT | Putting | グリーン上のパット |
ラウンド後にこの4つを並べれば、「今日どこで損したか」が1枚の内訳表になります。たとえば90台のゴルファーがプロ基準で測れば合計は大きなマイナスになりますが、見るべきは絶対値ではなく内訳の偏りです。合計−16のうちAPPだけで−8を占めているなら、練習場で最初に握るべきクラブはパターではなく7番アイアンです。

各カテゴリには、アマチュアの典型的な損失パターンがあります。
- OTT:最大の損失源はミート率でも飛距離でもなく、OB・ペナルティエリア・林です。1発の大曲がりが、他の13ホールの堅実なドライブを帳消しにします。
- APP:アマチュアのアプローチの実測分布は、本人の想像より大きくショート側に偏っています。グリーン手前のハザードが最も効率よくスコアを奪う理由です。
- ARG:ザックリ・トップの「大失敗」が数字を壊します。平均的な寄せの精度より、最悪の1打を消すことが先です。
- PUTT:ロスの主因はショートパットのミスではなく、ロングパットの距離感です。3パットの起点は、ほぼ常にファーストパットにあります。
本サイトでは、4カテゴリそれぞれについて深掘り記事を用意しています。自分の弱点カテゴリが分かったら、該当する各論に進んでください:SG:OTT完全ガイド/SG:APP完全ガイド/SG:ARG完全ガイド/SG:PUTT完全ガイド
7. SGが覆した通説——「パット・イズ・マネー」の誤り
SGの最大の功績は、ゴルフ界最古の格言の一つをデータで反証したことです。
「ドライブ・フォー・ショー、パット・フォー・ダウ」——飛ばしは見せ物、パットこそ金。パットがスコアの生命線だという思想は、日本でも「ゴルフはパットや」という言い回しで深く根付いています。練習グリーンでパット練習に励むことが上達への近道だと、多くのゴルファーが信じてきました。
Broadieの解析結果は逆でした。プレーヤー間のスコア差を最も説明するのはロングゲーム(ティーショット+アプローチ)であり、その寄与はスコア差全体の約3分の2。パッティングの寄与は15%前後にすぎません。プロ間の比較でも、上級アマとアベレージゴルファーの比較でも、この構図は同じでした。上手い人は、グリーンに乗るまでの打数で差をつけているのです。

なぜパットで差がつかないのか。理由は単純で、パットは上手い人とそうでない人の差がもともと小さいからです。8フィートを、プロが50%、アマチュアが40%で沈めるとします。期待値の差はわずか0.1打。一方150ヤードのアプローチでは、グリーンに乗せるか、ラフか、バンカーか、池かで期待値が0.5〜1打単位で動きます。1打あたりの「差がつく余地」が、ロングゲームは桁違いに大きい。差がつく余地の小さい種目でいくら鍛えても、スコア差は縮まらない——構造の問題です。
誤解のないように書きますが、パット練習が無意味だという話ではありません。パットは全ショットの4割前後を占める重要な要素です。ここでの結論は、練習時間の配分を、格言や感覚ではなく、自分のSGデータで決めるべきだということです。あなたの最大の損失源がPUTTなら、パット練習が正解です。ただしデータを取ってみると、そうでない人のほうが多い——それがBroadieの発見でした。
8. なぜ日本ではSGが知られていないのか
米国で標準になって10年以上経つ指標が、なぜ日本ではほぼ無名のままなのか。理由は3つ考えられます。
第一に、言語の壁。 原典『Every Shot Counts』は未訳で、まとまった日本語の解説がほとんど存在しませんでした。SGに触れる日本語記事の大半はツアー中継の用語解説——「観戦が楽しくなる豆知識」の枠に留まり、「自分のスコア改善に使う」視点で書かれたものは、単発の個人ブログを除けば皆無に近い状態です。理論への入口が、そもそも塞がっていました。
第二に、計測手段の壁。 前述のとおり、SGの計算には全ショットの記録が必要です。米国ではハード連動型デバイスの普及がSGの認知を押し上げましたが、日本語圏では手頃な計測手段がなく、「知ったところで自分では使えない指標」でした。使えない知識は広まりません。
第三に、文化の壁。 日本のゴルフ上達論は伝統的にスイング技術論が中心で、統計をスコアメイクに使う発想自体が新しいものです。「ゴルフはパットや」の格言が疑われずに残っているのも、それを検証するデータを誰も持っていなかったからです。
裏を返せば、この3つの壁はすべて崩れ始めています。データゴルフの潮流は確実に日本へ向かっており、国内でもDECADE系のコースマネジメント指導が動き出しています。SGが日本語で「当たり前」になる日は、そう遠くありません。本サイトは、その日のための基礎教材として書かれています。
9. アマチュアがSGを使うと、何が変わるか
SGはプロ観戦用の指標だと思われがちですが、本領はアマチュアの上達管理にあります。変わるのは3点です。
① 練習配分が変わる。 自分のSG内訳を数ラウンド分集めれば、最大の損失源が客観的に特定できます。そして多くの場合、本人の自覚と実データは食い違います。「パットが下手だ」と思い込んでいる人の実損がAPPに集中している、「ドライバーが課題」と言う人の数字はOTTよりARGが悪い——この種の発見が、限られた練習時間の使い途を根本から変えます。週1回2時間しか練習できない人ほど、配分の最適化の効果は大きい。
② コースマネジメントが変わる。 ベンチマークの相場観が頭に入ると、コース上の判断が変わります。ラフとフェアウェイの差が0.2打なら、飛距離を20ヤード捨ててまで刻む選択は多くの場合割に合いません。本当に避けるべきはOBと池であり、それらが片側にしかないなら、狙いを逆サイドに寄せるだけで期待値は改善します。8フィートに付けてもプロで五分なら、下りスライスラインを無理に沈めにいく理由も薄れます。SGは練習の指標であると同時に、18ホールぶんの意思決定の質を上げる判断基準でもあります(この応用を体系化したのが米国のScott Fawcettによる「DECADE」というコースマネジメント理論です。本サイトでも概説記事を予定しています)。
③ 上達の測定が変わる。 スコアは運とコース難度と同伴者に左右されますが、SGはショットの質そのものを測るため、練習の成果がスコアより先に数字に表れます。「ベストは更新していないが、SG:APPは3ヶ月で+1.5改善した」——これが見えれば、正しい努力を疑わずに継続できます。上達が停滞して見える時期を乗り越える装置として、SGほど有効なものはありません。
10. SGを計測する方法——現状の選択肢
理屈が分かったところで、実際の計測手段です。手計算は理論上可能ですが、1ラウンド80〜100打の全ショットについて地点と距離を記録し、ベンチマーク表と突き合わせる作業は現実的ではありません。この計算コストこそ、優れた理論であるSGの普及を妨げてきた最大の壁です。ツールを使うのが現実解です。
日本で入手できるSG対応ツールは、大きく2系統に分かれます。
| 系統 | 例 | 特徴と課題 |
|---|---|---|
| センサー・ハード連動型 | Garmin Golf(対応ウォッチ連動)、Shot Scope(クラブ装着センサー)、Arccos Caddie(グリップセンサー) | 計測は自動的で優秀。ただし数万円のハードウェア購入が前提 |
| 手入力型アプリ | Golfmetrics、Pinpoint、Upgame | ハード不要。ただしいずれも海外製で日本語対応は機械翻訳水準。ショットごとの手入力の手間も大きい |
つまり現状は、「ハードに数万円払うか、英語圏アプリの入力作業に耐えるか」の二択です。SGという理論の価値に対して、日本のゴルファーが払わされる参入コストが高すぎる。
この隙間を埋めるために開発しているのが SGCaddie です。センサー不要、スマートフォンのGPSだけでSGを自動計算する、日本語ネイティブのアプリです。Broadieのベンチマークデータに基づき、ラウンド後にSG内訳(OTT/APP/ARG/PUTT)を自動生成します。開発状況はアプリ紹介ページで公開しています。リリース通知を受け取りたい方は、同ページのメール登録をどうぞ。
11. よくある質問
Q. ベンチマークがプロ基準なら、アマチュアには関係ないのでは?
A. 物差しがプロ基準でも、診断は成立します。全ショットを同じ物差しで測るからこそ、「どのカテゴリが相対的に大きなマイナスか」という内訳の偏りが比較可能になるからです。またアマチュアのスコア帯別ベンチマークも存在するので、「平均90のゴルファー基準」で自分を測ることもできます。
Q. スコアカードにパット数をメモしていますが、それでは代わりにならない?
A. なりません。第3節で述べたとおり、パット数はアプローチの質に支配される指標で、パッティングの実力を測れていません。むしろ誤った反省を導く点で、記録しないより有害な場合すらあります。
Q. SGはいくつからが「良い」数字?
A. SGは絶対評価ではなく相対評価の道具です。見るべきは「+1.2だから良い」ではなく、「自分の4カテゴリのうちどこが最も低いか」「先月の自分より改善したか」。比較対象は他人ではなく、過去の自分です。
Q. 1ラウンドのデータで自分の弱点は分かる?
A. 分かりません。1ラウンドは運の比重が大きすぎます。傾向の把握には最低3〜5ラウンド、確度を上げるなら10ラウンド程度のデータが必要です。だからこそ、記録のコストが低いことが決定的に重要になります。
Q. パー3のティーショットはOTT?
A. APPに分類されるのが標準です。OTTは「距離を稼ぐショット」、APPは「グリーンを狙うショット」という機能分類なので、パー3の1打目は後者に入ります。
Q. シミュレーションゴルフや練習場のデータでもSGは出せる?
A. 弾道計測器が出すのはショット単体の物理データ(ボールスピード・打ち出し角・キャリー等)で、SGとは別物です。SGは「コース上の状況の変化」を測る指標なので、実際のラウンド(またはコースを模したシミュレーションラウンド)の記録が必要です。ただし両者は補完関係にあります。SGで「APPが弱点」と診断し、練習場の計測器でアイアンの距離のばらつきを潰す——診断はSG、治療は弾道データ、という役割分担が理想です。
Q. Every Shot Countsは日本語で読めますか?
A. 2026年現在、日本語訳は出版されていません。原著は英語ですが、本サイトの解説記事群は同書の理論体系を踏まえて構成しているので、まず日本語で全体像を掴む用途に使ってください。
12. まとめ
- SGは「1打ごとに、期待値と比べて何打得したか」を測る指標。式は1本、原理は1行
- 数千万ショットの実測データ(ShotLink)とBroadieの解析から生まれ、PGAツアーが2011年に公式採用した
- 従来スタッツの欠陥——距離の無視・2値評価・診断機能の欠如——をすべて解決する
- スコア差の主因はパットではなくロングゲーム。パットの寄与は15%前後——SGが実証した事実
- アマチュアにとっての価値は、練習配分・コースマネジメント・上達測定の3点
- 日本での無名さは「言語・計測手段・文化」の3つの壁によるもの。壁はすでに崩れ始めている
- 計測の壁はツールで越えるのが現実解。現状の選択肢は「ハード購入」か「海外製手入力」の二択で、SGCaddieはその隙間——センサー不要・GPSだけ・日本語ネイティブ——を埋めるために開発されている
スコアの改善は、損している場所の特定から始まります。感覚ではなく、数字で。この記事がその入口になれば十分です。
出典・参考文献
- Mark Broadie, Every Shot Counts (Gotham Books, 2014)
- PGA TOUR公式スタッツ(Strokes Gained各部門)
- 本文中のベンチマーク値・寄与率はBroadieの公表データに基づく概数です
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