パットの練習というと、多くの人はカップの近くから入れる練習を思い浮かべます。この距離が大事なのは間違いありません。ただ、スコアに対する影響を考えると、それ以上に優先すべき距離があります。
結論を先に書きます。1〜2メートルより、7〜10メートルの練習を優先すべきです。理由を説明します。
1〜2メートルより、7〜10メートルを優先する理由
7〜10メートル前後の、長い1打目のパットです。この距離を、カップに入れる意識ではなく、距離を正確に合わせる意識で打つパットを、ここではラグパットと呼びます。
ラグパットが合わないと、2打目に1〜2メートルではなく、3〜4メートルが残ります。3〜4メートルからの成功率は、1〜2メートルよりずっと低い。結果として3パットが増えます。3パットは、1ラウンドの中で最も高くつくミスの一つです。1打で終わるはずのホールが、2打分の損になります。
「入れる練習」より「寄せる練習」が効く根拠
パッティングがスコアの差に占める割合は、直感的に思われているより小さいという分析があります。Mark Broadieの研究では、パットの寄与度はおよそ15%程度とされ、他の要素に比べて突出して大きいわけではありません。
それでも、3パットの回避と、長い距離での距離感の精度は、多くのアマチュアがスコアを縮める上で最も確実に効く練習の一つです。近い距離を入れる確率をわずかに上げるより、長い距離を寄せる精度を上げるほうが、実際の失点を減らす効果が大きいためです。
この考え方は、DECADEの提唱者スコット・ファウセットと、Jon Sherman(Johnではない)の著書『The Four Foundations of Golf』の両方で、共通して強調されています。Shermanは、10フィート(約3メートル)以内の入れる確率をわずかに上げることよりも、3パットを避けることとスピードコントロールを磨くことのほうが、現実的にスコアを下げる方法だと述べています。
数字で見る、距離と成功率の関係
パットの成功率は、距離が伸びるほど急激に下がります。目安として、以下のような分布がよく知られています。
| 距離 | 入る確率の目安 |
|---|---|
| 1メートル | 90%前後 |
| 2メートル | 50〜60% |
| 3メートル | 35〜40% |
| 5メートル | 15〜20% |
| 7メートル以上 | 10%未満 |

数値はツアー選手を含む幅広いデータの傾向を示す目安。アマチュアの実測値はこれより低くなる場合がある。
この表から分かることは、7メートル以上のパットは、ほとんど入らないという前提で組み立てるべきだということです。入れることを目指すのではなく、次のパットが1〜2メートル圏内に収まることを目指す。この意識の切り替えが、ラグパット練習の核心です。
逆に言えば、2メートルを切ったパットは、練習次第で成功率を大きく上げられる範囲にあります。1打目のラグパットで2メートル以内に寄せられれば、2打目の成功率は50%を超える。ラグパットの精度が、結果的に2打目の成功率まで押し上げます。
なぜ、この順番が直感に反するのか
多くのプレーヤーが短い距離の練習を優先するのは、成功が目に見えて分かりやすいからです。1メートルのパットは、練習場でもグリーンでも、入るか入らないかがはっきりします。達成感があり、練習として続けやすい。
一方、ラグパットの練習は「寄ったかどうか」の判定が曖昧です。カップに入らなくても、寄れば成功。この評価の分かりにくさが、練習の優先順位を狂わせます。
もう一つの理由は、失点の見えにくさにあります。1メートルを外したパットは、その場でボギーやダブルボギーとして記憶に残ります。一方、7メートルのラグパットが合わずに3メートル残り、それを外して3パットになったとき、多くの人は「最後の3メートルを外した」ことだけを覚えています。本当の原因は、最初のラグパットが合わなかったことにあるのに、そこは記憶に残りません。
練習時間の配分
グリーンでの練習時間が15分あるとすれば、次のような配分が現実的です。
| 距離 | 目的 | 配分の目安 |
|---|---|---|
| 7〜10メートル | 距離感を合わせる(ラグパット) | 約10分 |
| 1〜2メートル | 入れる確率を保つ | 約5分 |

短い距離は練習しなくても成功率を保てる。長い距離の距離感は、練習しないとすぐ鈍る。
比率としては、ラグパットのほうに多くの時間を使います。短い距離は、練習しなくてもある程度の成功率は保てます。長い距離の距離感は、練習しないとすぐに鈍ります。
ラグパットの練習では、狙うのはカップそのものではありません。カップを中心にした半径1メートルの円をイメージして、その中に止められるかどうかを確認します。入れることではなく、寄せることが目的です。
具体的な練習方法
グリーン上に、7メートル・10メートルの2地点からボールを数個ずつ置き、それぞれカップに向けて打ちます。1球ごとに、カップからの距離をメートル単位で記録します。
目標は「入れる」ではなく「半径1メートル以内に止める」ことです。10球打って、何球がこの円の中に収まったかを数える。この成功率が、そのまま3パットの起きやすさに直結します。
グリーンの速さは日によって変わるので、この練習はラウンド当日の朝にも行う価値があります。その日のグリーンの速さを体で覚えておけば、1番ホールの最初のパットから、実戦に近い強さで打てます。
1〜2メートルの練習が不要という意味ではない
ここまでラグパットの重要性を強調しましたが、1〜2メートルの練習が不要という意味ではありません。この距離は、外せば1打が確実に増える、頻度の高い場面です。
ただ、多くの人がすでにこの距離の練習には時間を使っています。練習場やグリーンで、カップの近くから何球も打つ光景はよく見かけます。不足しているのは短い距離の練習ではなく、長い距離の距離感の練習のほうです。だからこそ、限られた練習時間では、配分をラグパットに厚く取るべきだという結論になります。
グリーンの傾斜も、ラグパットで確認する
ラグパット練習には、もう一つの効用があります。そのホールのグリーン全体の傾斜を、体で把握できることです。
7〜10メートルという距離を打つ過程で、ボールは長くグリーン上を転がります。この間に、グリーンがどちらに傾いているか、どこで速度が変わるかという情報が、短い距離のパットよりずっと多く得られます。
初めて回るコースでは特に、練習グリーンでのラグパットが、そのコース全体のグリーンの速さや質を知る手がかりになります。短い距離の練習だけでは、この情報は得られません。
ラグパットが苦手な人に共通する癖
ラグパットが安定しない人には、いくつか共通する傾向があります。
最も多いのは、ストロークの大きさを毎回変えてしまうことです。短いパットと同じ感覚で、手先の強さだけで距離を調整しようとすると、再現性が下がります。距離感の基本は、振り幅(バックスイングの大きさ)で距離をコントロールすることです。強さではなく、振り幅を距離ごとに変える意識のほうが、安定した結果につながります。
もう一つの傾向は、練習量の絶対的な不足です。1〜2メートルの練習は多くの人が自然に行いますが、7〜10メートルを狙って練習する人は多くありません。単純に、慣れていないから距離感が育っていないというケースが大半です。
グリーンに出る前に、素振りで「7メートル分の振り幅」をイメージしてから打席に入る。これだけでも、いきなり本番で距離感を作るより精度が上がります。
コースでの実践
練習で身につけたラグパットの感覚を、実際のラウンドでどう使うかも整理しておきます。
グリーンに乗ったら、まずカップまでの距離とグリーンの傾斜を確認します。この時点で、「入れにいく」意識を一旦手放し、「1〜2メートル圏内に止める」ことを目標に切り替える。この意識の切り替えが、力みを防ぎます。
入れにいく意識のまま長い距離を打つと、強く打ちすぎて大きくオーバーするか、慎重になりすぎてショートするか、どちらかに偏りやすくなります。「寄せる」という目標のほうが、実際には結果的にカップに近づくパットを生みやすい。
3パットを数えることから始める
この記事の内容を実践に移す前に、まず自分の現状を知る必要があります。次のラウンドで、3パットの回数と、その原因になった1打目の距離を記録してみてください。
- 3パットが起きたホールの数
- その1打目(ラグパット)の距離
- 1打目の結果、何メートル残ったか
3パットの多くが、5メートル以上の長い距離から始まっているなら、ラグパットの精度が原因である可能性が高い。逆に、短い距離からの3パットが多いなら、話は別で、パッティングストロークそのものの見直しが必要かもしれません。
今日から変えられること
道具も、レッスンも必要ありません。次にグリーンに乗ったとき、まず頭の中で「入れる」を「寄せる」に置き換える。それだけで、長い距離のパットに対する体の反応は変わり始めます。
関連する記事
PUTTの計算方法そのものについては、別記事で詳しく解説しています。距離ごとの期待打数がどう決まるか、GPSではなくプレーヤーの入力に頼る理由なども、あわせて確認してください。
まとめ
パットの練習時間が限られているなら、配分の優先順位を見直す価値があります。カップの近くから入れる練習は達成感があり、続けやすい。ただし、スコアへの影響という観点では、7〜10メートルの距離感を磨くほうが、3パットという最も高くつくミスを減らす効果があります。
次の練習では、まずカップから10メートル離れた場所にボールを置いて、半径1メートルの円を目標に打ってみてください。入るかどうかではなく、寄るかどうかを基準にする。この視点の切り替えが、実際のラウンドでの3パットの減少につながります。

