先週は90、今週は98。8打の差。この2ラウンドのあいだに、腕が8打ぶん落ちたわけではありません。1ラウンドのSGは、その大半がノイズです。
では何ラウンド貯めれば実力の数字になるのか。これは計算できます。
精度は、ラウンド数の平方根で決まる
平均値の精度は、ばらつきをサンプル数の平方根で割った値になります。統計でいう標準誤差です。
ラウンド間のSG合計のばらつきを仮に3打と置くと、こうなります。

| ラウンド数 | 平均SGの精度 |
|---|---|
| 1 | ±3.0打 |
| 4 | ±1.5打 |
| 9 | ±1.0打 |
| 16 | ±0.75打 |
| 36 | ±0.5打 |
1ラウンドでは±3打。これは「良いラウンド」と「悪いラウンド」の差がまるごと誤差に収まるということです。1回の数字から実力を読むことは、原理的にできません。
月2回のペースなら、±1打の精度に届くのが半年後。ここを知らずに毎週スイングを変えていると、変えた効果を測る前に次を変えることになります。
カテゴリによって、必要な回数が違う
4つの内訳は、収束の速さが同じではありません。
OTT(Off the Tee/ティーショット)は1ラウンドで14回前後、しかも毎回ティーグラウンドから打つので状況が均質です。比較的早く落ち着きます。
ARG(Around the Green/グリーン周り)が最も遅い。回数が10回前後と少ないうえ、砲台からの下り、ぬかるんだラフ、目の前が花道と、同じカテゴリの中で難易度が桁違いに散らばるからです。
つまり「今日はアプローチが悪かった」は、4つの中でいちばん当てにならない判断です。もっともそう感じやすいカテゴリが、もっともデータの足りていないカテゴリになっている。
ショットの計測でも、同じ理屈が効く
練習場やシミュレーターでの計測も同じです。平均値を±1ヤードの精度で出すのに必要な球数は、実測の標準偏差から逆算すると7番アイアンで9球、8番で12球、9番で15球、ドライバーで40球。
ただしSGが見ているのは平均ではなく、ばらつきのほうです。ばらつきの推定誤差は7球で±29%、20球で±16%、50球で±10%。10球や20球で散らばりを描いても、その散らばり自体が大きくぶれます。ショットパターンを測るなら、ドライバーは50球が最低ラインです。
記録は毎回、評価は10回に1回
実務的にはこう分けるのが現実的です。
1ラウンドで読んでいいのは「事実」。OBが何発出たか、3パットが何回あったか、シャンクが出たか。これは1回でも記録できます。
「実力」は10ラウンド単位。4カテゴリのどこが弱いか、練習の配分をどう変えるかは、ここまで貯めてから決める。
この2つを混ぜると、毎週方針が変わります。
例外:1ラウンドでも読める場合
極端な値が出たときだけは別です。ばらつきが3打なら、その2倍にあたる±6打を超えた数字は、偶然では説明しにくい。SG:PUTT(Putting/パット)が単独で-5といった値が出たなら、その日のうちに中身を見る価値があります。
逆にいえば、±3打の範囲に収まっている数字は、どれだけ気になっても基準値と照らして解釈するには足りていません。数字が足りないときに読み取ろうとすると、たいていノイズを読みます。
出典:Mark Broadie『Every Shot Counts』(邦訳『ゴルフデータ革命』)、PGA TOUR/ShotLink。ラウンド間のばらつき3打は説明のための仮定値。球数の目安は筆者のシミュレーター計測による標準偏差からの算出。

