Strokes Gainedの計算方法——パー4を1ホール、手で計算してみる

式は1行です。そのショットのSG=打つ前の期待打数 − 打った後の期待打数 − 1。これを1打ずつ繰り返し、足し上げる。難しい統計処理は出てきません。必要なのは掛け算ですらなく、引き算だけです。

目次

使う数字は「期待打数」ひとつだけ

期待打数とは、その地点からカップインまで平均何打かかるか、という統計値です。距離とライが決まれば1つの数字が決まる。SGの計算に必要な材料はこれだけです。

以下はツアープロ基準の概数です。計算の筋道を見せるために丸めています。

地点 期待打数(概数)
パー4のティー(400ヤード) 4.00
フェアウェイ 150ヤード 3.00
ラフ 150ヤード 3.20
グリーン 3メートル 1.60
グリーン 1メートル 1.05
Strokes Gainedの計算式。打つ前の期待打数から打った後の期待打数と1を引く
引き算ひとつ。それ以上のことはしない

最後に引く「1」は、いま打った1打そのものです。1打使って状況がどれだけ良くなったか。良くなった分が打数のコストを上回ればプラス、届かなければマイナス。それだけの話です。

パー4を1ホール、通してみる

1打目:ティーショット。フェアウェイ150ヤード地点へ。
4.00 − 3.00 − 1 = ±0.00。悪くはないが、基準どおり。

2打目:150ヤードをグリーンオン。ピンまで3メートル。
3.00 − 1.60 − 1 = +0.40。このホールで一番の仕事。

3打目:3メートルのパットが1メートルオーバー。
1.60 − 1.05 − 1 = −0.45。入れば大きなプラスだった場面を外した。

4打目:1メートルを沈めてカップイン。カップの期待打数はゼロ。
1.05 − 0 − 1 = +0.05。ほぼ基準どおり。

パー4を4打で上がるまでの期待打数の推移と、各ショットのStrokes Gained
期待打数はショットのたびに下がる。その下がり方が1打ぶんを超えたかどうか

足すと合う

4打のSGを合計すると、0.00 + 0.40 − 0.45 + 0.05 = ±0.00

一方、ティーの期待打数は4.00で、実際のスコアは4打。差はゼロです。ショット単位の合計と、ホール単位の差が必ず一致する。これがSGの構造で、検算にもなります。合わなければどこかの期待打数を取り違えています。

4つのショットのStrokes Gainedを並べた棒グラフ。合計はゼロ
内訳が分かると、同じ「パー」でも中身が見える

スコアカードには4と書かれるだけです。しかし中身は、アプローチで+0.40稼ぎ、3メートルのパットで−0.45落としたホールだった。パーの内側にプラスとマイナスが同居している。この解像度がスコアカードには無い。

罰打とOBはどう扱うか

打数に足すだけです。OBを打って前の地点から打ち直すなら、消費したのは2打(1打+罰打1)。式の最後に引く数が1ではなく2になります。

ティーからのOBなら、4.00 − 4.00 − 2 = −2.00。場所が1ミリも進んでいないのに2打消えたので、まるごと損失になる。ティーショットの失点が一撃で大きくなるのは、この構造のためです。

「ナイスショット=プラス」ではない

250ヤード飛んでもラフなら、フェアウェイ150ヤードより期待打数が高いことがあります。その場合SGはマイナスです。飛距離でも見た目でもなく、期待打数がどれだけ下がったかだけで決まる。

逆に、当たり損ないが転がってフェアウェイに残れば、SGはプラスになりえます。感覚と符号が食い違うのは正常な挙動で、そこが感覚の補正に使えるところでもあります。

手計算が続かない理由

式は簡単でも、材料集めが重い。全ショットの残り距離とライを記録する必要があり、1ラウンドで70回前後の記録が要ります。プレー中にやり切れる量ではありません。

とくにパットは厄介です。グリーン上は1メートル単位で期待打数が動くため、距離の精度がそのまま結果に効きます。GPSの誤差はSGの計算にほとんど影響しませんが、それはグリーンに乗るまでの話で、グリーン上だけは別です。パット距離は自分で入れるしかない。

計算そのものは中学の算数です。詰まるのは、いつも記録のほうです。

まとめ

SGは「打つ前の期待打数 − 打った後の期待打数 − 1」。ショットごとの合計はホールの差と一致し、罰打は引く数を増やすだけ。飛距離ではなく期待打数の変化で符号が決まる。SGの全体像を押さえたら、あとはこの引き算を繰り返すだけです。


出典:Mark Broadie『Every Shot Counts』(邦訳『ゴルフデータ革命』)。本文の期待打数は計算の説明のために丸めた概数です。

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