ティーで右を向いて打ったら、今度は右の木に入った。次のラウンドでは真ん中を向いて、左OB。1回の結果で判断を変え続けると、どこにも落ち着きません。
正しい判断でも、悪い結果は出る
ショットは必ず散らばります。だから同じ判断で同じスイングをしても、結果は毎回違う。これは技術の問題ではなく、ゴルフという競技の構造です。

このホールを100回回れば、平均は4.6でも、7を叩く回も確実に出ます。その1回を引いて「この戦略は間違っていた」と結論するのは、分布の端を見て中心を否定しているだけです。
判断と結果は、4通りに分かれる

良い判断で良い結果なら、問題はありません。悪い判断で悪い結果なら、素直に直せばいい。
残る二つが厄介です。良い判断×悪い結果は、耐えるしかありません。ここで戦略を変えると、正しいものを捨てることになる。
もっと危ういのは悪い判断×良い結果です。木の隙間を狙って抜け、バーディを取る。このとき「やはり攻めて正解だった」と学習してしまう。間違った判断が、良い結果によって強化される。コースで一番高くつくのはこのパターンです。
なぜ結果から逆算してしまうのか
結果は目に見え、判断は見えないからです。スコアカードには7と書かれますが、その7が悪い判断の帰結なのか、良い判断の不運なのかは書かれません。
ここを埋めるのがStrokes Gainedです。ショットごとに期待打数との差を取り、多数のラウンドを積む。1打では何も分からないという前提に立っている指標です。ブロディが1ラウンドではなくシーズン単位で見るのも同じ理由です。
プロセスのほうを見る
ラウンド後に振り返るなら、問うのは「何打だったか」ではなく「あの場面でもう一度やるなら同じ選択をするか」です。
同じ選択をすると答えるなら、そのホールは終わりです。違う選択をするなら、なぜ当日はそうしなかったかを見る。情報不足か、自分の分布を誤っていたか、あるいは分かっていて選べなかったか。直し方がそれぞれ違います。
最後の一つだけがメンタルの問題です。Jon Shermanが四つの土台の一つに期待値の管理を置いているのも、ボブ・ロテラが結果から切り離すことを説くのも、この分布を前提にしています。メンタルは気持ちの問題ではなく、散らばりがある世界で判断を保つための技術です。
判断を変えていいとき
何があっても変えるな、という話ではありません。変える根拠になるのは、結果ではなく、分布の推定が変わったときです。
10ラウンド記録して、自分のティーショットが思っていたより左に寄っていたと分かれば、狙いを直すべきです。これは結果論ではなく、前提の更新。逃がす量の計算の入力が変わっただけです。
境目は単純です。1回の結果から変えるのは結果論、複数の記録から変えるのは推定の更新。
まとめ
散らばりがある以上、良い判断でも悪い結果は出ます。1回のOBで戦略を変えない。一番危ういのは、悪い判断が良い結果で強化されるときです。変える根拠になるのは結果ではなく、記録から見えてきた分布です。
出典:Mark Broadie『Every Shot Counts』(邦訳『ゴルフデータ革命』)/Jon Sherman『The Four Foundations of Golf』。図は概念図です。

