パーオン率が上がったのにスコアが変わらない。フェアウェイキープ率だけ見れば去年より良い。パット数は減っているのに、80台が遠い。
従来のスタッツを真面目に付けている人ほど、この状態になります。数字の付け方が悪いのではありません。パーオン率もフェアウェイキープ率もパット数も、1打の重みを持っていないからです。
どこが抜けているのかを、4つの代表的な指標を順に分解しながら見ていきます。
○か×かは、「どれだけ外したか」を捨てている
パーオン率は、規定打数でグリーンに乗ったかどうかだけを記録します。乗れば○、乗らなければ×。
この×の中に、まったく違う3つの結果が同居しています。
- グリーン手前3ヤードのカラー。残りはパターで転がせる
- グリーンを外して10ヤード、ウェッジで寄せられる
- 林に打ち込んで横に出すしかない。グリーンまで140ヤード
スコアへの影響は、1打近く違います。パーオン率の表には、どれも同じ「×」として1つずつ記録されます。並べて集計すれば、この3つは統計的に等価なミスとして扱われることになる。実際には、失点の大きさが3倍以上違うミスを、同じ重みで数えています。
フェアウェイキープ率も同じ構造です。50センチ外れたラフと、隣のホールまで飛んだ球が、同じ×として並びます。
フェアウェイキープ率は、距離を無視する
もう一つ、フェアウェイキープ率が持っていない情報があります。どこまで飛んだかです。
当サイトで使っている期待打数をもとに、複数のティーショットのパターンを比べます。フェアウェイからの期待打数は、100ヤードで2.80打、150ヤードで2.97打、200ヤードで3.12打あたりです。ラフはフェアウェイよりおよそ0.20〜0.25打不利になります。
| ティーショット | 残り距離とライ | 期待打数 |
|---|---|---|
| A:フェアウェイをキープ | 180ヤード・フェアウェイ | 約3.06打 |
| B:ラフへ外した | 120ヤード・ラフ | 約3.07打 |
| C:フェアウェイをキープ | 210ヤード・フェアウェイ | 約3.13打 |
| D:ラフへ外した | 90ヤード・ラフ | 約2.98打 |

数値はBroadieのPGAツアー平均データに基づく近似値。
AとBはほぼ互角です。60ヤードの飛距離差が、ライの不利をちょうど打ち消します。さらに驚くのはDで、フェアウェイを外しているのに、遠くのフェアウェイをキープしたCより期待打数は良い。飛距離が出ていて、かつ大きく外れなければ、ラフからのほうが得なケースすらあります。
フェアウェイキープ率の集計では、AとCは○、BとDは×です。実際の損得はDがいちばん良く、Cがいちばん悪いのに、表の上では逆の評価がつく。飛ばす人がフェアウェイキープ率で悪く見え、刻む人が良く見える構造が、ここにあります。この指標を目標に置くと、判断は刻む方向へ寄っていきます。
パット数は、グリーンを外すほど良くなる
パット数はもっとねじれています。
パーオンしたホールは、10メートル前後のパットから始まることが多い。2パットが普通で、3パットも出ます。グリーンを外したホールは、寄せて1メートルに付けば1パットで終わります。
グリーンを外すほど、パット数は減ります。パーオン率が低い人ほどパット数の見栄えが良くなる。パット数を減らそうとしてアプローチの精度ではなくティーショットの安全策を選び、結果としてパーオン率が下がれば、パット数という目標は達成されるのに、スコアは悪くなります。
PUTT(Putting/パット)を正しく測るには、何メートルから何回で入れたかを距離ごとに見るしかありません。総数を数えても、上手さは出てきません。
スクランブル率にも、同じ弱点がある
パーオンを逃したホールで、パーを守れた割合を示すスクランブル率という指標もあります。これも一見よくできた指標に思えますが、根は同じです。
10ヤードのアプローチを1メートルに寄せて成功したスクランブルと、40ヤードの難しいアプローチを2パット圏内に入れてかろうじて成功したスクランブルが、同じ「成功」として数えられます。逆に、あと数センチで外れたショートパットの失敗も、大叩きした後のダブルボギーも、同じ「失敗」として扱われる。
成功と失敗の間にある、無数の「どれだけ惜しかったか」がすべて消えます。頻度としては便利な指標ですが、練習の優先順位を決める材料にはなりません。
足し算ができない
ここまでの4つに共通するのは、単位がバラバラだということです。
パーオン率はパーセント。パット数は回数。フェアウェイキープ率もパーセント。スクランブル率もパーセント。足しても引いても意味のある数字になりません。
だから「今日の82は、どこで作られたのか」に答えられない。パーオン率が50%でパット数31、フェアウェイキープ率が43%。この3つを並べても、10打のロスがどこから来たのかは出てきません。それぞれの指標は、それぞれ違う側面を教えてくれますが、合算できないので、優先順位はつけられません。
SGは全部を「打数」に揃える
Strokes Gained(ストロークスゲインド)がやっているのは、単位の統一です。
すべてのショットを期待打数の差に換算する。ティーショットも、アプローチも、パットも、同じ「打」で出る。単位が揃っているので、足せます。
OTT(Off the Tee/ティーショット)、APP(Approach/グリーンを狙うショット)、ARG(Around the Green/グリーン周り)、PUTTの4つを足すと、その日スクラッチプレーヤーに対して何打損したかになります。10打のロスの内訳が出る。
先ほどのティーショットA〜Dも、SGなら同じ物差しで並べられます。○×ではなく、期待打数がどれだけ動いたかを見ているからです。Dのように、フェアウェイを外していても期待打数が良いショットは、SGでは正しくプラスに評価されます。従来のフェアウェイキープ率では評価できなかった判断の良さが、SGでは見える形になります。
実際に、何がどれだけ見えるようになるか
仮に、あるラウンドで次のような数字が出たとします。
| カテゴリ | SG | 意味 |
|---|---|---|
| OTT | +0.3 | ティーショットはスクラッチ平均より0.3打得 |
| APP | -3.1 | グリーンを狙うショットで3.1打損 |
| ARG | -0.8 | グリーン周りで0.8打損 |
| PUTT | -1.4 | パットで1.4打損 |
| 合計 | -5.0 | スクラッチ平均より5打多い |

架空の例。実際のSG値はプレーヤーごとに異なる。
この結果を見れば、練習の優先順位は一目瞭然です。ティーショットはむしろ強みで、APPが最大の失点源。パーオン率だけを見ていたら、パーオンできない原因がティーショットの不安定さにあると誤解して、練習場でドライバーばかり打つことになったかもしれません。実際の失点はグリーンを狙うショットにある。
これが、単位を揃えることの実用的な価値です。頻度の指標では、優先順位を間違える方向に誘導されることがあります。
それでも従来スタッツを捨てる必要はない
従来のスタッツが無意味なわけではありません。速いということが最大の利点です。
パーオン率もフェアウェイキープ率も、スコアカードの余白に印を付けるだけで取れます。SGは残り距離とライの記録が要る。手間が違います。
使い分けとしては、こうなります。
| 従来スタッツ | SG | |
|---|---|---|
| 分かること | 頻度 | 1打あたりの損得 |
| 記録の手間 | ほぼゼロ | 距離とライが要る |
| 足し算 | できない | できる |
| 向く場面 | その日の傾向を軽く見る | 練習配分を決める |
| 誤誘導のリスク | ある(刻む方向、パット偏重) | 低い |
パーオン率が30%から45%へ上がったなら、それは実際に良くなっています。ただし「だから次に何を練習するか」には答えてくれない。そこから先がSGの領域です。
従来スタッツからSGへ、移行する現実的な手順
いきなり全ショットを記録するのは負担が大きく、続きません。段階的に移行する手順を示します。
- まず1〜2メートルのパーパットの成功率だけを記録する(新しい記録項目は1つだけ)
- 次に、グリーンを外したときのアプローチの残り距離を追加する
- 3ラウンドたまったら、この2つだけでも失点の傾向が見え始める
- 余裕が出てきたら、ティーショットが外れた方向とライを追加する
- 4カテゴリすべてがそろって、初めて完全なSGが計算できる
従来のスタッツで頻度を把握しつつ、SGの記録項目を少しずつ足していく。ゼロから始めるより、この移行のほうが挫折しにくい。
よくある疑問
Q. パーオン率が高い人は、SGでも良い数字になりますか。
多くの場合はそうなりますが、必ずしも一致しません。パーオンしていても、ピンから大きく外れた位置に乗せていれば、APPのSGは伸びません。パーオン率とAPPのSGが乖離している人は、グリーンには乗せられているが、ピンへの寄せの精度に課題がある、という読み方ができます。
Q. スコアが良い日は、SGも必ず良くなりますか。
基本的には連動しますが、完全には一致しません。SGはスクラッチプレーヤーとの比較なので、同じ90というスコアでも、難しいコースでの90と易しいコースでの90ではSGの値が変わります。コースの難易度を跨いだ比較ができる点も、単純なスコアの比較にはない利点です。
Q. 記録の手間を考えると、結局どちらを使えばいいですか。
併用が現実的です。毎ラウンド、パーオン率とフェアウェイキープ率は今までどおり記録しつつ、月に数回だけSGの記録を取る。頻度は従来スタッツで把握し、原因分析が必要になったときだけSGの記録を見返す、という使い分けもできます。
まとめ
頻度を数えるところまでは、どの指標でもできます。1打の重みを付けられるかどうかで分かれます。
パーオン率、フェアウェイキープ率、パット数、スクランブル率。どれも「起きたか起きなかったか」を数える指標で、「どれだけ得したか損したか」は数えていません。単位が違うので、足し合わせて優先順位をつけることもできません。
スコアが伸び悩んでいるのに、従来のスタッツはむしろ改善している。この矛盾を感じたときが、SGを取り入れるタイミングです。
本記事の期待打数は、Mark Broadie『Every Shot Counts』(邦訳『ゴルフデータ革命』)に掲載されたPGAツアー平均データに基づく近似値です。実際のベンチマークはカテゴリ・距離帯によって細分化されています。

