「今日はパットが悪かった」「ドライバーさえ曲がらなければ」——ラウンド後の反省は、たいてい感覚で語られます。そして感覚は、かなりの頻度で間違っています。
どこで何打損したのかは、記憶ではなく数字にしないと見えません。その数字が Strokes Gained(SG)です。ここでは、多くのゴルファーが信じている一つの通説を、SGのデータで検証します。「ショートゲームが命」は、本当か。
通説——「ショートゲームが命」「パット・イズ・マネー」
ゴルフには古くからの格言があります。「ドライブはショーのため、パットは金のため(Drive for show, putt for dough)」。スコアを決めるのはグリーン周りとパットだ、という考え方です。
根拠もあります。1ラウンドの総打数のうち、100ヤード以内のショットとパットが占める割合は、たしかに6割前後にのぼります。打数が多いのだから、そこを磨けばスコアは縮む——一見、筋が通っています。
データはこう言う——スコア差の約2/3はロングゲーム
ところが、Mark Broadie が大量のショットデータを分析して示したのは、逆の結論でした。上級者と平均的なアマチュアのスコア差を分解すると、その大部分は、ティーからグリーンに向かうまでのロングゲームで説明されます。

ティーショット(OTT)とアプローチショット(APP)を合わせたロングゲームが、スコア差のおよそ2/3。グリーン周り(ARG(Around the Green/グリーン周り))とパット(PUTT(Putting/パット))を合わせても、残りの約1/3にとどまります。とりわけパット単独の寄与は、全体の15%前後です。
打数が多い場所と、スコア差が生まれる場所は、同じではない。
なぜ「ショートゲームが命」と感じるのか
パットは、記憶に残る
3パットは痛い。しかもホールの最後、一番感情が動く場面で起きます。だから記憶に強く残り、「今日はパットが悪かった」と結論づけたくなります。一方、2打目が5ヤードずれて花道からこぼれた損失は、静かで、記憶に残りません。感覚は、損失の大きさではなく、痛みの鮮明さで順位をつけてしまいます。
「ショット数の多さ」は「スコア差」ではない
グリーン周りとパットのショット数が多いのは事実です。しかしそれらは、上級者とアマチュアで差がつきにくいショットでもあります1メートルのパットも、花道からの寄せも、上手い人と平均的な人で結果が大きくは変わりません。差が大きく開くのは、ティーショットの方向と、セカンドの距離コントロール——つまりロングゲームです。頻度が高いことと、差を生むことは別の話です。
では、どこを見ればいいか
結論は「パット練習をやめろ」ではありません。順番の問題です。自分のスコアがどこで削られているかを、感覚ではなくSGで確かめる。多くの場合、最大の損失はロングゲームに眠っています。
- ティーショットの得失を見る → SG:OTT完全ガイド
- スコア差の4割が生まれるアプローチ → SG:APP完全ガイド
- グリーン周りは「ライが全て」 → SG:ARG完全ガイド
- 「入れる練習」から「残さない練習」へ → SG:PUTT完全ガイド
そのうえで、グリーン周りやパットの弱点が数字で見えたなら、そこを磨くのは正しい。ショートゲームが無意味なのではなく、「まずショートゲーム」という思い込みが、伸びしろを見えなくしている——それがデータの示すところです。
まとめ
- 総打数の6割はショートゲームでも、スコア差の約2/3はロングゲームで生まれる。
- パット単独の寄与は15%前後。記憶に残るが、差はつきにくい。
- 「どこを磨くか」は感覚で決めず、SGで自分の最大の損失を特定してから決める。
SGそのものの考え方は、こちらで解説しています → Strokes Gainedとは何か【完全ガイド】。
※本記事の数値は、Mark Broadie『Every Shot Counts』(邦訳『ゴルフデータ革命』)で公表されたデータに基づく概算です。カテゴリの寄与割合はプレーヤー層や集計方法により変動します。

